flotsam books（フロットサムブックス）

「ONSEN」は日本の写真家・山谷佑介（Yusuke Yamatani）が約15年前から野湯（のゆ、やとう）と呼ばれる自然の中で自噴する未整備の温泉巡りを基に続けているシリーズです。野湯一帯が作り出すこの世とあの世が交差するような剥き出しの風景に心を奪われた山谷は、友人や家族、時にはSNSやZINEで参加者を募りながら、温泉巡りを続けてきました。温泉文化の歴史は古く、『日本書紀』や『古事記』の中で、男女が一緒に飲食し、歌を交わして親睦を深める場として記述されています。

前作『ONSEN I』は、野湯周辺の自然が作り出す圧倒的な造形美や、そこに集う同行者たちの姿を切り取った写真でまとめられました。

本書『ONSEN MMXXIV』では、荒涼とした風景、山、地表、硫黄、噴煙、そこに佇む人や肌に加え、道中の車窓や食事、そして同行者が撮影した写真も織り交ぜながら、13万文字にも及ぶ旅の中で交わされた会話のテキストが繰り返し挿入されています。 山谷は自然の造形美だけではなく、SNSを使い偶発的に集まった見知らぬもの同士のプリミティブなコミュニケーションを通して、いつの時代も変わらない人間の営みに焦点を当てています。野湯探しという探検は、時代や場所を超えた記憶、すなわち《それはかつてあった》風景を探る試みなのです。

「ONSEN I 」は、山谷佑介による温泉をテーマにした現在進行形のプロジェクトの新作です。
　野湯（のゆ、やとう）と呼ばれる自然の中に自噴する整備されていない温泉巡りは、山谷がカメラを手にして間もない15年程前から始まり、友人や家族、時にはSNSやZINEで希望者を募り現在も続いています。
　湯や水辺の場を中心にした人々のコミュニケーションは『日本書紀』や『万葉集』にも記述されており、山谷も温泉での撮影を続けていくうちに、原始の時代に耳を傾け、空間を超えて異なる惑星へと思いを馳せるような視点になってきたといいます。それら一連の実践は、時間を超えて変わらずに存在する自然や人間の姿を記録する撮影行為だけにとどまらず、ありのままの風景に身体を介在させて、人間と世界そのものを捉え直そうとする試みとも言えます。

本書はflotsam booksが出版した初めての写真集です。
デザインはflotsam booksのロゴなどを手掛けた山田悠太朗の手によるもので、表紙は山田が実際に山谷の野湯行きに同行し、湧き出る温泉や硫黄を直接紙に写し取ることで生まれた模様をシルクスクリーンと特殊加工で忠実に再現しています。

盗難車に偽造ナンバープレート、命を狙われ続ける報復の連鎖——シドニーの裏社会は生き残りをかけたゲームであり、Abuzar “Abz” Sultani　（アブザル “アブズ” スルタニ）は勝つためにそのゲームを戦った。

『The Diary of a Hitman』は、悪名高いヒットマンと共に制作された初の写真集であり、オーストラリアの組織犯罪の実態に迫る貴重な記録です。

この本には、これまで公開されていないヒットマンの武器庫の写真、PGP暗号化されたBlackBerryメッセージ、ゴールバーン・スーパーマックス刑務所内で書かれた手書きの記録が収められています。雇われ殺しの冷酷な計算が明かされる内容です。

ジャーナリストのマフムード・ファザルによる強力な序文と、Pouria Khojastehpay（プーリア・コジャステハペイ）による編集を加えたこの作品は、「play for keeps」（生き残るための真剣勝負）という唯一のルールが支配する世界への旅を描いています。

『CUTS』は、Steve Brooks（スティーブ・ブルックス）が1990年代から2000年代に撮影したポートレート集です。
スティーブはジェームズ・ルボンと共に、ロンドンの伝説的なヘアサロン『CUTS』のオーナーでした。
彼が撮影したカジュアルなトリプティク（3連写真）は、35mmの白黒コンタクトシートとして拡大され、ソーホーの店舗のウィンドウに展示されていました。そして次のフィルムが現像されると新しいものに差し替えられるというスタイルでした。
『CUTS』は、ロンドンの文化史における重要な時代を記録した貴重なアーカイブとなっています。
この第２版には、新たに発見されたポートレートを含む100ページ以上の追加が収録されています。

『Murmurings of the Skin』は、人間の身体とのつながり、身体とテクノロジーの交差点、そして身体的な接触への人間の欲求を探求する作品です。
Olivia Arthur（オリヴィア・アーサー）は、約8年にわたり、人々の身体との関係、自分自身の身体に心地よさを感じることの意味、そして触れ合いや親密さの重要性をテーマに作品を制作してきました。
この取り組みには、若者、身体性とセクシュアリティ、安定性とロボティクス、COVID時代における触れ合い、ジェスチャー、孤独についてのシリーズが含まれています。

この作品を始めるきっかけとなったのは、彼女自身の妊娠と2人の子どもの誕生であり、シリーズの中には彼らの写真も登場します。

2005年、オランダの写真家 Henk Wildschut（ヘンク・ヴィルスフート）は、ヨーロッパにおける不法移民問題をテーマとしたプロジェクトを開始しました。その成果として、書籍『Shelter』（2011年）、『Ville de Calais』（2017年）、『Rooted』（2019年）を発表しました。

2021年には『Distance』で、オランダにおける新型コロナウイルス危機の影響を捉えました。

『Territorium』では、ヴィルスフートは農業と自然の間に存在するギャップを探求しています。この取り組みは写真集としてだけでなく、ロッテルダムでの展示およびビデオインスタレーションとしても発表されました。

彼の故郷ハーダウェイク周辺の地域は、彼の幼少期には穏やかな自然のオアシスでしたが、現在では農業従事者と自然保護活動家との間で文化的な対立が激しくなっています。ヴィルスフートは、この闘争を印象的なドキュメンタリー写真を通じて描き出しています。

Anouk Kruithof（アヌーク・クルイトフ）は、写真、彫刻、インスタレーション、パフォーマンス、書籍、ビデオ、アニメーション、ウェブサイト、パブリックドメインへの介入など、多層的かつ学際的なアプローチで活動するビジュアル・アーティストです。
「Universal Tongue」は、インターネット時代のグローバルなダンスの万華鏡の多様性を称えるプロジェクトです。これは、自己表現、文化的アイデンティティ、エンパワーメント、楽しさの表現としてオンラインで配信されるダンス動画に魅了されたビジュアル アーティストのクルイトフから生まれました。
彼女は世界中の50人のリサーチャーと協力し、オンラインで8800本以上のダンス動画を収集。その中から1000種類のユニークなダンススタイルに編集し、4時間にわたるダイナミックな8チャンネルのビデオインスタレーションとして制作しました。これには、すべてのダンスを一つに繋ぐサウンドトラックが付けられています。

リサーチャーたちは、それぞれが見つけた動画に登場するダンススタイルについて短いテキストを提供しました。これら1000本のテキストと動画から切り取ったスクリーンショットを組み合わせることで、各ダンススタイルの起源、背景、意味が紹介されています。

写真家が捉えた世界の出来事や社会課題を発信するプロジェクトは、出版レーベルとして を立ち上げ、00号となる今号は日本の写真家、原美樹子（Mikiko Hara）を特集しています。
原が日々の生活のなかで視線を向けた、どこにでもあり得る、でもその時でしかない、この作家ならではの近作（撮影＝2021-2024年）約30点で構成されています。

直線を嫌い、自然な曲線とカラフルな色彩を取り入れた建築で知られるHundertwasser（フンデルトヴァッサー）。
本書は、最初のスケッチから模型、完成までの過程を追いながら、実現したか否かに関わらず、彼が手がけたすべての建築物やプロジェクトが紹介されています。
フンデルトヴァッサーの独自のアプローチと彼が残した遺産に触れることができる貴重な1冊です。

人形と仮面を用いて幻想的な世界を探求した写真家、Ralph Eugene Meatyard（ラルフ・ユージン・ミートヤード）の写真集。

シカゴ美術館での展覧会に合わせて出版されたこの1冊には、彼のアーカイヴから厳選された70点以上の未公開作品が収められています。