flotsam books（フロットサムブックス）

日本の写真家 Momo Okabe（岡部桃 ）の写真集「イルマタル」です。
前作「Bible」出版後の2014年から2019年まで国内で撮影した写真で構成されています。
イルマタルとはフィンランドの民族叙事詩カレワラに登場する大気の乙女の名前であり、彼女の身体によって世界の創造が完成されたとされています。
本作では非性愛者としての彼女の妊娠・出産という大いなる試みが描かれており、それはどこか原初の世界を漂い、子供を宿したイルマタルの物語とリンクしているように感じます。
赤、青、黄、紫…とさまざまに色を付与された写真は、非現実的な色彩なのに幻想的ではなく、むしろ生々しささえ感じます。
人工授精の場面やウエディングドレス姿の場面、そして出産、日常生活や日常の風景の中で少しずつ進んでいくシークエンス。極めて現実的なイメージが少しずつ脳裏に焼き付けられていくようであり、そして最後の静けさはこれから始まる赤ん坊の人生を静かに祝っているようでもあり、祈っているようでもある。

モスクワ出身で東京在住のエレナ・トゥタッチコワによる初写真集『林檎が木から落ちるとき、音が生まれる』です。

『林檎が木から落ちるとき、音が生まれる』はトゥタッチコワが幼少期の記憶をテーマに、ロシアの自然に囲まれて暮らす兄妹たちのかけがえのない夏の日々を、美しい風景とともに2009年から継続的に撮りためてきた作品群です。
ロシアには夏の期間、祖父母が住む田舎の家や、「ダーチャ」と呼ばれる自然の家で過ごす習慣があり、寒い冬が訪れる土地で、夏という季節は特別な意味を持ちます。そして太陽が輝く夏がいつの間にか始まり去って行くように、あどけない少年少女たちも知らず知らずのうちに成長し大人になっていきます。
そんなささやかな、けれど誰もが経験するであろう変化を、“林檎が落ちる音”という言葉が暗喩しています。刹那的でありながら懐かしく、記憶の奥に柔らかく触れる写真たち。国境を越えた普遍的な感性によって、清々しい一冊が生まれました。

――林檎が木から落ちた、それだけのこと。木にいたときも誰の目にも触れず、落ちても草の中に隠れたままの小さな林檎。その音だけがいつまでも記憶に残った。アーニャが11歳になった年の夏の終わり、彼女の髪の毛が一番長く伸びた８月のことだった。（あとがきより抜粋）"

スイス生まれでニューヨークを拠点に活動する写真家Henry Leutwyler（ヘンリー・ルートワイラー）は持ち物や文化的に重要な遺物（アンディ・ウォーホルの絵筆、ボブ・ディランのハーモニカ、ジャニス・ジョプリンのギター）を丹念に描写する才能を持っており、「Neverland Lost」は、故マイケル・ジャクソンの有名なピーター・パンの楽園であるカリフォルニア州サンタバーバラのネバーランド・ランチの内容を記録したものです。
マイケル・ジャクソン神話の構成要素や小道具をむき出しにしたこれらの写真は、彼がネバーランドを追われた瞬間の「成長しない少年」の奇妙で幻想的なビジュアル・ストーリーを生み出しています。

ピーター・マーティンスとニューヨーク・シティ・バレエ団との4年間のコラボレーションの後、2012年冬、Henry Leutwyler（ヘンリー・ルートワイラー）は前例のないバックステージでの撮影を許可されました。
その結果として生まれた本書「Ballet」は、30日間の写真撮影で実現した30年間の芸術への情熱を反映しています。
ルートワイラーは舞台の影に潜り込み、「見えない存在」となり、35mmのライカ以外には何も使わずにダンサーの姿を記録しました。
彼は出演者のパーソナルスペースを探り、より抽象的なポートレート、つまり完璧さを前提とした芸術の中での彼らの熱狂的な存在を視覚的に切り取ることができたのです。
BALLETは、カーテンの向こう側から見た厳かな世界へのオマージュであり、最前列から見たときのそのエーテルのような美しさを補完しています。

Larry Clark（ラリー・クラーク）の写真集「Tulsa」です。
俺は１９４３年オクラホマのタルサで生まれた。１６でアンフェタミンを初めて打って、３年間、仲間と打ちまくった。そしてある日、街を出た。でもそのうちに、またタルサに舞い戻って来てしまった。一度ハリが刺さると決して抜けないってことさ。（日本語版より）

Garry Winogrand（ゲイリー・ウィノグランド）の展覧会に合わせて刊行されたカタログ「WINOGRAND: FIGMENTS FROM THE REAL WORLD」です。

フランスの写真家 Henri Cartier-Bresson（アンリ・カルティエ＝ブレッソン）の写真集です。

日本の写真家 Yusuke Yamatani（山谷佑介）の写真集「Doors」です。
「Doors」は、セルフポートレート撮影とドラム演奏を融合させ、2018年から京都、東京、ヨーロッパなど時と場所を変えながら行われた一連のパフォーマンス作品をまとめたというよりは、ひとつの回答とも言える写真集です。
なぜ写真家がドラムを叩くのか？一見、素っ頓狂なイロモノとも誤解されかねない写真家の意図はこの写真集によって見事に写真表現に昇華しています。
パフォーマンス中に写し出された写真はもちろんのこと、何千キロにも及ぶ道中で撮られたスナップショット、イベントフライヤー、レシート、絵葉書、パフォーマンス後に送られてきた写真、そして2万字のインタビューなど、一見バラバラに見えるドラムパフォーマンスから始まったひとつひとつの写真や出来事が織りなすパーツが、この写真集の中で大きな輪郭を紡いでいます。
写真を探す写真家の旅は写真集によって完結したとも言えるんじゃないかな。最高。

メンフィス出身の写真家William Eggleston（ウィリアム・エグルストン）のヴィンテージネガからプリントされた、路上や、アメリカの小さな街のパーラー、駐車中の車、看板、捨てられた店先等をパーソナルな視点で撮ったLOS ALAMOSシリーズの写真展「LOS ALAMOS」に併せて刊行された写真集。

オランダの写真家 Sanne Sannes（サンネ・サンネス）の写真集「VISIONARY VISION OF SANNE SANNES」です。