flotsam books（フロットサムブックス）

21歳のPeter Heisterkamp（ピーター・ハイスターカンプ）は、1964年にカラフルで遊び心のある抽象作品に「Palermo」のサインを入れ始めました。
これは、アメリカのギャング、フランク・"ブリンキー"・パレルモに似ていると言われたからです。
この美しい本は、1964年にデュッセルドルフのアカデミーで有名なヨーゼフ・ボイスのクラスに参加してから1977年に亡くなるまでのパレルモの絵画を歴史的かつ批評的に研究したもので、戦後および抽象芸術におけるパレルモの意義を明らかにしています。

著者Christine Mehring（クリスティン・メーリング）は、パレルモの短いキャリアの中で、オブジェ、布絵、壁画、金属絵、そして友人であり同僚でもあるゲルハルト・リヒターとの共同プロジェクトという、5つの同時かつ異なる作品群を制作したと述べています。
これらの作品群は、ドイツ美術を国際的に孤立した状態から脱却させようとしたパレルモの努力を示すものであり、作為、ユーモア、時代色、遊びを取り入れることで、モダニズム絵画を歴史的に共鳴する抽象画に変えようとしたことを示しています。

Julio Mario Santo Domingo （フリオ・マリオ・サント・ドミンゴ: 1957-2009）は、ドラッグ、セックス、マジック、ロックンロールをテーマにした世界最大の個人コレクションを自宅や倉庫に集めたコレクターであり、先見性のある人物でした。
50,000点を超えるライブラリーには、貴重な原稿や写真、ポスター、ボトル、手紙、アヘンパイプ、ピンボールマシンなどあらゆるものが含まれていました。
サント・ドミンゴのコレクションには、アンディ・ウォーホル、ティモシー・リアリー、ジークムント・フロイト、サド侯爵、シャルル・ボードレール、アレン・ギンズバーグ、ローリング・ストーンズ、アレイスター・クロウリーなど、さまざまな人物の作品が含まれており、数世紀にわたる芸術、科学、政治に精神を高める薬物が与えた無数の影響を探っています。
包括的であると同時に空想的、情報的であると同時に幻覚的でもあるこの美しいデザインの本は、コレクションの一部をハイライトして、視覚的に驚くべきサント・ドミンゴ図書館の祭典を作り上げています。
歴史の中で誤解されがちな存在に光を当てた「Altered States」は、人生、政治、大衆文化に及ぼすドラッグの影響について、これまでにない洞察を与えてくれます。

ロサンゼルスを拠点に活動するアーティスト Matthew Craven（マシュー・クレイヴン）のコラージュやイラストレーションは、教科書に掲載されている画像や独自の幾何学模様を利用して、異なる文化や時代のイメージを並置し、共通点を強調することで新たな手作りの世界を創り出そうとしています。
考古学的な遺跡や自然界の写真が、ヴィンテージの映画ポスターの裏に描かれたカラフルなテキスタイルに重ねられ、催眠術のように魅惑的なシンボルとデザインのヴァナキュラーを生み出しています。
LACMAのキュレーターであるレスリー・ジョーンズによる紹介文が掲載された『PRIMER』は、クレイヴンの作品の初の出版物であり、強迫観念的な造形に触発されて伝統的な歴史的物語を再構成したものです。

女性によるアート界の変革に不可欠な役割を果たし、挑発的で究極に感動的な作品を持つアーティスト Hannah Wilke（ハンナ・ウィルケ）の初のモノグラフです。
ウィルケの作品は、彼女の人生と同様に、形式的な発明と社会的な活動、個人的な忠誠心と個人的な自由、そして何よりも息を呑むようなリスクについての英雄的な物語を描き出しています。
1960年代、70年代に台頭してきた女性アーティストのコミュニティで決定的な存在感を示したウィルケは、自身や女性たちの経験に応じて、ユニークで物議を醸すようなビジュアル言語を開発しました。
堂々とした個人主義者である彼女は、女性だけでなく男性との関係も大切にし、セクシュアリティの喜びを率直に表現しました。
ラテックスやチューインガム、写真やフィルムなど、従来とは異なる幅広い媒体を用いて、マルセル・デュシャンやデビッド・スミスなどの先人たちに不遜なまでに敬意を表しています。
ウィルケは、視覚表現の道具として、また対象としての身体に焦点を当て、自分の芸術を、偽りのない謙虚さ（彼女の裸体が見ていて単純な喜びであったとき）や恥じらい（癌によって無慈悲に損なわれたとき）のない、絶え間ない自己探求としました。
ウィルケの芸術は、大胆で、時に非道で、最終的には胸が張り裂けそうなほどの勇気を持った人物であるウィルケという人間と切り離すことができません。

本カタログは、ドイツのアーティスト Alexandra Bircken（アレクサンドラ・ビルケン）の、木や糸、小枝などの日常的なものを使ったアッサンブラージュ作品を包括的に紹介する初めてのものです。
無機質な素材と有機的な素材の両方を含む伝統的な工芸品に魅了されていることがわかります。

日本のアーティスト 滝沢広（Hiroshi Takizawa）の2020年rin art associationで開催された個展を元に作られた作品集「The Scene (Berlin）」です。
全編を通して展示風景の写真を背景に実際に展示された作品の図版を貼り付けることによりより立体的に展示を追体験出来るような仕様になっています。
図版の途中途中に段落ごとに挟み込まれる中野拓哉さんによるテキストはモネやマン・レイ、ウォーカー・エヴァンス、シンディ・シャーマンなど美術史に名を連ねる巨匠や古代のギリシヤ彫刻などを引き合いに出しながら滝沢の作品を深く読み解きます。

日本のアーティスト 佐々木成美（Narumi Sasaki）の作品集「● 記録集 JP」です。
2021年LOKO GALLERYで開催された展示の絵画とオブジェを組み合わせた作品や、ドローイング作品などをまとめた作品集です。
ホフマンの小説「ファールンの鉱山」とロシアの民話「石の花」に着想を得た緑に塗られたキャンバスを切り取った奥に石のオブジェが見える作品「その職人はついに帰らなかった」を模した表紙も面白い。
タイトル通り作品には●というか円を描いた多く、渡辺真也さんのテキストによると佐々木さんが描くのは絵画の向こう側にある世界とのこと。繰り返される●は、立体的な作品も平面に描かれたドローイングも物質性を超えてまるであちら側に通じる入口のようにも思えてくる。
渡辺真也さんによる深く作品を読み込んだテキストや奥岡新蔵さんによるインタビューもとても充実した内容です。

Dan Graham（ダン・グラハム）の作品と理論は、コンセプチュアル・アートを語る上で重要な位置を占めています。
現代美術の分野において、実践者として、また著名な批評家や理論家として、非常に大きな影響力を持つ人物です。
彼の作品は、人と建築の関係や、建築が私たちに与える心理的な影響を問いかけています。
その作品は、親密な瞬間や詳細が人目につかない方法で初歩的に放送されたときに生じる気まずさを強調し、自分自身が映っているのを見ながら同時に他人を見るという覗き見のような行為を調査し続けている。
このモノグラフは、彼の主な作品を分析し、彼の重要な文章を集めたものです。

本書は、禁欲と過剰の間にある陶酔と酩酊の状態が持つ様々な精神的、政治的、心理的、社会的、性的、美的な意味合いを明らかにしています。

古代から現代までの芸術作品は、異なる文化圏を考慮に入れながら、心を変える状態の様々な側面を示しています。
全10章で構成されており、それぞれの章では、恍惚状態のさまざまな側面と、何世紀にもわたって変化してきた恍惚の社会的意義に焦点を当て、異なる文化がどのように恍惚を扱い、表現してきたかを探ります。

コンセプチュアルアーティスト兼教師である John Baldessari （ジョン・バルデッサリ）は、生涯を通じてカリフォルニアを拠点に活動してきました。
1970年代のポストモダン思想の先駆者と言われ、初期のテキストペインティングで注目を集め、写真とテキストを組み合わせた作品を発表してきました。
彼のプロジェクトは、アーティストブック、ビデオ、映画、ビルボード、公共作品など多岐にわたります。
35年以上にわたり、言葉とイメージの関係に関心を持ち続け、不条理を楽しみ、現代美術の理論にアイロニーを指摘してきました。バルデッサリは1970年から版画家としても活躍しています。

本書 「John Baldessari, A Catalogue Raisonne of Prints and Multiples 1971 -2007」は、バルデッセリの膨大な作品群と、このアーティストが世界のアート界に与えた影響を初めて包括的にまとめたものです。