人々の観察----その身体、動き、周囲との関係性----は、ドイツ人写真家Wolfgang Tillmans(ヴォルフガング・ティルマンス)が過去30年にわたって築いてきた多様な作品群の核心にあります。
現在、このような触覚的な関係性や相互作用は、COVID-19パンデミックやテクノロジーの進化により大きな変化を遂げています。社会的距離を取る必要性や日常生活の仮想空間への移行によって、人と人との関わり方は根本から変わりつつあるのです。
『Wolfgang Tillmans: Sound Is Liquid』は、こうした社会的変化を背景に、ティルマンスの作品を改めて捉え直す一冊です。
オーストリア・ウィーンのMUMOK(ルートヴィヒ財団現代美術館)で開催された展覧会に伴い刊行された本書では、1990年代のポップカルチャーの文脈で制作された初期作品から、高く評価されている写真による抽象作品、グローバル化とデジタル化が進む21世紀初頭の現実を高解像度でとらえた写真、さらにはコロナ禍直前およびその最中に撮影された作品に至るまで、ティルマンスの幅広い作品が紹介されています。